「マチ★アソビ」神山健治監督トークショーまとめ（5/5）

出席者の神山監督、石井プロデューサー（Production I.G）、松浦代表取締役（3DCGを手がける「サンジゲン」）、クリエイティブ・ディレクターの古田さん（博報堂）への質疑応答です。

内容は、企業ロゴを作中に入れるための裏話、神山監督の数字へのこだわり、声優さんの裏話、4人が注目するアニメ作品など。

Q:
「TIGER＆BUNNY（タイガー＆バニー）」でスポンサーのロゴが露骨に入っているシーンについて、どんな感じで入れているのか？

A：
ヒーローを全部3DCGで作ってある。それにテクスチャをはるので、シールをはる要領で3DCGのモデルにロゴをはっている。
注意点として企業のロゴはレギュレーションが細かく決まっているが、3次曲面にロゴをはるとゆがんでしまうので、止めで見せるところはゆがまないようにはる。Appleのロゴはまわりの余白もミリ単位で細かく決まっていて大変。

Q：
攻殻機動隊の公安9課、東のエデンの「セレソンNo.9」など、9という数に神山監督の思い入れがあるのか？
タチコマとJUIZ（ジュイス）の声優さんが同じ（玉川砂記子さん）ですが、監督が個人的にファンなのか？

神山：
公安9課は原作から9だった。
個人的には野球が好きで、公安9課を野球の9人にひっかけ、オリジナルメンバー8人に笑い男を入れて9人になると面白いと思った。でもそれは反対されてしまうと思ったので、笑い男が入団拒否したことになった。

2nd GIGの「個別の11人」はあえて数字を11に変えてみた。
ファーストシーズンがドメスティックな事件を扱っていたのに関して、2nd GIGはインターナショナルな事件を扱うため、インターナショナルなスポーツであるサッカーをテーマにして11にしてみた。

ジュイスは関わりを持っていくごとにAIが育っていって個性を獲得していくというものなので、かわいらしい声からボーイッシュな声、セクシーな声も含めて演じ分けができる方で芸の幅も広く、テクニックもトップクラスの玉川さんにに満場一致で決まった。

Q：
攻殻機動隊のサイトーさんに関するエピソードがあれば教えてください。

A:
サイトーは女性スタッフの中でも人気が高い。
サイトー役の大川透さんは今や押しも押されぬ声優さんになっておられるが、攻殻機動隊のころは、「鋼の錬金術師」に出演される前だったので、ギャランティもそんなに高くなかった。

2nd GIGの総集編を作った時、どうしてもサイトーのセリフを取り直す必要があり、収録現場に来ていただいて「了解」とだけ言っていただいた。
声優さんの契約で他のシーンのセリフを使い回すことは出来ず、またギャラも一言でも出ずっぱりでも一緒なので、大川さんが「申し訳ないからもっとしゃべっても大丈夫ですよ」とおっしゃってくださったが、本当に他には何も無くて史上最短の2分でアフレコが終わってしまった。

Q：
注目しているアニメや監督、スタッフなどを挙げていただければ。

神山：
「けいおん!」
監督も女性で、女性が作っているこういう作品には男が作っても太刀打ちできないなと感じた。
女性スタッフが中心で作っている魅力があふれている。
技術的なことを言うと、作画の方向が理にかなっていて絵が崩れない。
そういう技術的なことも含めて、ぱっと見てもかわいい。
僕が作ったら、絶対気になって彼女たちのお父さんお母さんとか出しちゃう。
そういうのを一切出さずに書ききるのもすごい。

松浦：
「東のエデン」が大好き。
「TIGER＆BUNNY」
コンテを見た段階では「売れるのかな？」と思ったが、1話を見た段階で「これは面白いぞ」と。
「花咲くいろは」
技術的に作画がすばらしい。
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」
うちのスタッフでも、見ていると毛穴が開くヤツが何人かいる。

古田：
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」
僕らの世代はあれでみんな道を踏み誤った。
神山監督はいい感じに道を踏み外して一線でアニメを作っていますが、僕は好きなアニメを作りたいけど作れないところにいってしまった。

石井：
「シティーハンター」
ちゃんと弾丸が書いてあるというのをビデオのコマ送りで見つけて、アニメってすごいなと思ってアニメ業界を目指し、ああいうリアルな絵を作る人を探していたら神山監督に出会った。

◆ 最後に

まだまだアニメーションのポテンシャルは高い。
スタッフにもお客さんに喜んでもらえないと、作品を作り続けることはできない。

今まではテレビで一方的に放映したり、OVAとして発売したりという手法が多かったが、ネットの時代が到来して、ニコニコ動画やYouTubeでの配信などニーズにあった形式で、作り手の個性を生かした作品を届けられたらいいなと改めて感じた。

アニメ業界自体が1つの会社としてハリウッドみたいに発展していければ。
海外の人も応援してくれているというのも分かった。
地方からもっとイベントが広がっていくと面白い。これからは地元特有のアニメも出てくるかもしれない。

以上、「マチ★アソビ」神山健治監督トークショーのまとめでした。
言葉遣いや話の順序など、かなり編集しているので本来の内容を知りたい方はGigazinさんのサイトでどうぞ。