本当に海外で評価されているか
スタジオジブリ制作秘話まとめ(6/8)
スタジオジブリプロデューサー鈴木敏夫のインタビューより
日本のコンテンツは世界でも評価されているが、日本のものを正当に外国の人に評価してもらうのは至難の業。ジブリ映画が評価されていても「本質をちゃんと受け止めてもらえているんだろうか?」というと疑問もある。
外国は全体から部分へ、日本は部分から全体へ
西洋と日本の建築物の違いからみる
西洋だと一番分かりやすいのは教会で米国でも欧州でも、上から見るとみんな十字架の形をしている。これ以外作らない。
ところが日本の建物の作り方、日本の江戸屋敷には設計図がない。
江戸屋敷では最初に床柱を何にするかを決め、それによってその家の風格が決定付けられる。
安いものを使うと、ほかも全部安っぽくなる。
床柱の次は隣の引き戸を作り、そういうことが終わってから初めて「部屋の広さどうしようかなあ」となる。つまり、細かいところから入っていって、少しずつ作っていく。
そして1部屋できたら、「隣の部屋どうしよう」となる。
まだ、玄関もトイレもお風呂場もない。
部屋を建て増しで作っていって、ある段階で「玄関やお風呂場をどこにしよう」というやり方で作っている。
何が基本になっているかというと、室町時代以来、畳の大きさの天地180センチ、横90センチこれをレゴみたいに組み合わせていく。
つまり、日本の建物の最大の特徴は建て増しだということ。
これが外国の人に違和感を与える。
整理すると、外国は全体から部分へ行く、日本は部分から全体に行く。
このようにもともと西洋と日本では発想の仕方が違う。
『ハウルの動く城』の城をどうやってデザインしたか。
最初に普通の西洋の城を考えたがつまらない。
ある日、宮崎が何となく大砲を描いたん。大砲の筒を描いたら、そのもとはどうなっているかということで、横に家を描いている。家を描いているうちにそこからアンテナみたいなものが出てきて、大砲をもう1つ描いて……といろいろやっているうちにあのデザインができてきた。
最後に「動く城だからさあ、鈴木さん。足だよね」と言って、悩み始めそして突然、宮崎が「やっぱりにわとりかな」と言った。あれ、にわとりの足。
『ハウルの動く城』はフランスで大評判になったが、何が評判になったかというとあのお城のデザインで、外国の人には絶対に描けないし理解不能。
『魔女の宅急便』でキキが空を飛ぶシーンを描いた時には、1枚の絵の中に視点が2つあった。
1つの視点は地平線の向こうを見ていて、もう1つの視点は真上から手前の絵(キキ)を見ている。
それを1枚の絵として描く。これは外国の人にはありえないが宮崎は平気。